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「PayPal Here」の展開で、日本の決済市場を進化させる――ソフトバンクモバイル 喜多埜裕明氏に聞く


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「PayPal Here」の展開で、日本の決済市場を進化させる――ソフトバンクモバイル 喜多埜裕明氏に聞く


ITmedia Mobile 8月27日(月)11時44分配信











「PayPal Here」の展開で、日本の決済市場を進化させる――ソフトバンクモバイル 喜多埜裕明氏に聞く
PayPal Hereの決済フロー。1200円のカード読み取り端末をスマートフォンに差し込んで使う



神尾寿のMobile+Views:

 個人の生活からビジネスまで、さまざまなシーンでリアルとインターネットの垣根が取り払われつつある。スマートフォンの普及も追い風になり、インターネットの中だけの消費活動やサービス提供から、リアルの店舗・施設と連携した形へと急速に変化しているのだ。O2O (Online to Offline、ネットの情報と実店舗への集客や購買を連携させる取り組み)という言葉が、現実の世界の中に浸透しつつある。



 そのような中で、ソフトバンクと、アメリカの決済サービス会社PayPalが戦略提携を発表。グローバルモバイル決済ソリューション「PayPal Here」を軸に、ネットとリアルを結ぶ新たな決済サービスを展開していく方針を発表した。



 ソフトバンクはPayPalとの提携で、どのようなビジネスやサービス展開を目指すのか。そのメリットと波及効果はどれほどあるか。ソフトバンクモバイル 常務執行役員 商品統括の喜多埜裕明氏に、ジャーナリストの神尾寿が話を聞いた。



●PayPalをなぜ選んだのか



――(聞き手 : 神尾寿) 私はおサイフケータイが始まったときから、電子マネーやクレジットカードのビジネスを取材してきました。今回、PayPalとの提携でソフトバンクは従来のコンテンツ課金だけでなく、リアルな決済市場に本格的に参入されます。そこで、その戦略や取り組みについておうかがいたいと思います。



 最初に、ソフトバンクとPayPalが戦略提携について、ソフトバンク側の狙いや背景をお聞かせください。



喜多埜裕明氏 大きな狙いとしては、O2Oに向けての狙いがあります。(ソフトバンク社長の)孫がいつも申し上げているように、我々のテーマとして「情報革命」があり、スマートフォンの時代になって、そのビジネスはモバイルに広がってきています。



 O2Oということで言いますと、すでに「Yahoo!」で検索した情報から、飲食店など店舗にお客様が向かうという原初的な送客は行われています。今やリアルな街の情報をネットで調べてから行動するというのは、ごくあたり前に行われているわけですね。



 しかし、このようにネットから送客しているだろうという感覚は(インターネット企業として)持っていても、それがリアルのビジネスに本当に貢献できているのかとか、その先のところまでは今までは分かりませんでした。そこでソフトバンクが決済ビジネスに参入することによって、さまざまな店舗と消費者にとってメリットのあるサービスが作れるのではないか。我々にとってのビジネスチャンスもあると考えて、PayPalとの戦略提携を行いました。



―― なぜ、アメリカのPayPalを選んだのでしょうか。



喜多埜氏 いくつか要因があると思っています。ひとつはPayPalが、オンラインの決済ビジネスで圧倒的な取り扱い量を誇っていること。その点で親会社が(eコマース大手の)eBayであることも、重要なポイントでした。あとは信頼性ですね。PayPal Hereのような簡易なカードリーダーを作っているところは何社かあるのですが、信用情報を扱うので、しっかりしたところと組む必要があった。



 そして、もうひとつの理由があります。スマートフォンを活用したクレジットカード決済として、アメリカではSquareの実績が上がっています。アメリカでPayPal HereとSquareは競争関係にあるわけですが、このようにライバルと切磋琢磨している企業と組む方がいいのかなと思いました。



―― おサイフケータイの電子マネーでの取り組みでは、ドコモが三井住友カードと提携して「iD」を立ち上げました。国内でアクワイアリング(加盟店開拓)のノウハウがあるカード会社と組む、という選択肢は考慮されなかったのでしょうか。



喜多埜氏 今回、僕らが営業をかけていきたいところは、既存のカードリーダーが入っていないところです。カード会社さんが営業をかけても、端末が高すぎるとか、回収までの期間が長すぎるとかで端末を入れてくれないようなところなわけです。考え方を新しくやっていかないと突き進めないだろうということも含めて、(既存のカード会社ではなく)PayPalとやるのがいいという決断をしました。



―― しかし未着手市場に挑戦するといっても、加盟店開拓は必要です。アクワイアリングをどうするのか。PayPalはアクワイアリングの機能を日本に持っていませんよね。



喜多埜氏 持っていません。具体的には申し上げられませんし、将来的にどうなるかは分かりませんが、別のところと組んでやるということになります。



―― まったく新しい組織としてアクワイアリングの組織が立ち上がって、そこにはソフトバンクもコミットメントしていくのですか?



喜多埜氏 いえ、そのハンドリングはPayPal側がやります。



●ソフトバンクが持つ「グループの強み」とは?



―― 加盟店開拓の目処や目標などはあるのでしょうか。



喜多埜氏 データソースが色々あるのでどれが本当か分かりませんが、今、クレジットカードを使えるお店は、だいたい100万件くらい、使えないお店は300万件強だとみています。ターゲットとしているのは、この300万件強のリアル店舗に加えて、店舗を構えずデリバリーでビジネスをしている業種・業態になります。ですので、(加盟店規模として)400万から500万件くらいのポテンシャルがあると思っています。



 今回、PayPal Hereの端末を1200円で販売させていただき、決済手数料は5%と設定させていただきます。この手数料率の評価はさまざまでしょうが、できるだけ早いうちに(加盟店を)数十万件規模にまでもっていきたい。中長期的には、加盟店規模は100万を目指します。



―― それだけの新規加盟店を開拓するとなると、消費者の非現金取引がどれだけ増えるかも重要になります。日本はアメリカなどに比べて現金決済が多く、クレジットカード利用率が低いわけですけれども、今後、日本でもカード利用率が変わっていくと考えていらっしゃるのでしょうか。



喜多埜氏 変えていきたいと思っています。そもそも、現金だと500円払うと今500円がなくなるわけですが、カードだと支払いは先になりますよね。また、各社がポイントを付けていますので、メリットは現金より大きいはずなんです。世の中の人々は節約のためにあの手この手といろんな方法を考え出し、ハウツー本なども売れるわけですよね。それなのに、どうしてメリットのあるクレジットカードを使わないのか。そういったことをしっかり訴えかけたい。



 また、日本の治安も悪くなっています。お財布に現金を入れているより(クレジットカード利用の方が)安全という面でも訴えることができるかもしれません。クレジットカードを使った方がお得な部分を色々出していきたいと思っています。



 PayPal Hereには二通りの使い方があります。一般的にはスマートフォンにカードリーダーを差してクレジットカードを読み取る方法ですが、それ以外にユーザー(消費者)側のアプリもあって、これを利用すればカードリーダーを使わなくても決済ができるのです。そして、そのアプリで自分の購入履歴も分かる。さらに店舗側からクーポンやポイントを出したりできます。そうすると「現金よりずっといいぞ」と思われるようになるんじゃないかと。



―― ソフトバンクとして、クレジットカードのイシュア事業を行っていく計画はありますか。



喜多埜氏 それは十分考えられますね。そもそも、ヤフーはクレジットカードを(イシュアとして)出しています。



 これはJCBと連携していて、イシュアはヤフーという形で数年前から出しています。これをグループとしてどうしていくのか、ということも考えています。



 実は私は今年3月まで、ヤフーにいたのですよ(笑)。そこで今度はソフトバンクグループの一員として、ヤフーもひっくるめてどうしていくのが最適解なのかを考えようと思っています。イシュアがヤフーであるものをうまく担いでいくのか、もう少し違った形もあるかもしれない。



―― イシュアとしてカードを発行していて、それがPayPal HereやPayPalと組み合わされていくと、消費者側と加盟店側が対になるので、CRL(証明書失効リスト)をちゃんと組み込むとか、ダイレクトマーケティングの機能と決済をセットで展開するとかが、とてもやりやすいですね。



喜多埜氏 そのとおりです。他社とソフトバンクグループとの違いは、ソフトバンクモバイルにウィルコムを合わせて3000万以上、ヤフーに5000万以上のお客様がいらっしゃって、連絡を取れる方法を持っていること。Webもありますし、メールでいろんなお知らせを届けることもできます。そこが大きなメリットだと思っているので、おっしゃるように、イシュアやアクワイアラの業務にも大きなメリットがあります。



―― 一気通貫ですよね。今までのO2Oは送客が主な部分で、それ以上のことまで踏み込めていかなかったのは確かです。ソフトバンクが、グループとしてネット上での会員向けサービスから決済、加盟店業務まですべてにソリューションを持つというのは大きい。



喜多埜氏 ええ。消費者に情報を伝えるにしても、例えば男性にとって女性用化粧品の5%割引クーポンは嬉しくもなんともありませんし、邪魔ですよね。そのあたりをグループ全体でうまくマージ(融合)しながらやっていけると思っています。ヤフーはターゲティング広告で、オンライン上の行動履歴や登録情報を使っているわけですが、今度はそれとオフラインの情報もうまく組み合わさってくると、よりその人に喜んでいただけると思います。



 さらにソフトバンクモバイルで、モバイルの事業があることも重要です。スマートフォンのいいところは位置情報機能があること。近くのいい情報をいいタイミングで送信できれば、これもユーザーと店舗側の両方に喜んでいただけます。一気通貫で決済にからむ事業をやっていければ、いいサービスを作れるかな、と戦略的には考えています。



●既存カード決済サービスに対する、PayPal Hereの優位性



―― 今後アクワイアラとして加盟店を増やしていくわけですが、既存のクレジットカード会社に対しての強みとしてどのような訴求を行うのでしょうか。



喜多埜氏 まず、初期導入コストが安いことが訴求ポイントになります。これまで数万円から十万円レベルで導入していたクレジットカード決済端末が、1200円で買える。さらに今までだと(決済の認証処理用に)有線回線を引く必要があり、それの維持コストが当然かかったわけですが、(PayPal HereはiPhoneに接続するため)それも必要ありません。



 むろん「PayPal Hereを使うためにスマートフォンを買う」という方もいらっしゃるかもしれませんが、時代の流れとして、いずれにしてもケータイからスマートフォンに移行するのです。どうせ持つことになるスマートフォン、どうせ払う通信費の中で、PayPal Hereは使える。そう考えれば、決済手数料として5%はいただきますが、月々のオペレーションコストは格段に安いと言えるでしょう。



 また、(クレジットカード決済した売上金の)回収も従来ですと15日から30日かかっていたものが、PayPal Hereでは、ほぼ即時になります。キャッシュアウトして銀行から引き出すのも、どの銀行かにもよりますが、3営業日から5営業日で引き出せるようにしようと考えています。このあたりが既存クレジットカード事業者に対する強みになるでしょう。



 さらにこれらに加えて、Yahoo! Japanとの連携や、顧客基盤を持っているソフトバンクモバイルとの連携もある。単純に「クレジットカード決済が使えますよ」というだけではなく、(O2Oの)マーケティング手段も用意していく。これらが他社との大きな違いになるでしょう。



―― 私はPayPal Hereで一番の強みになるのは、支払いまでの短さだと考えています。飲食店などで顕著ですが、クレジットカード加盟店の声として「クレジットカードで決済された売上金が、カード会社から支払われるまでが長すぎる」という声をよく聞きます。小規模事業者を中心に、現金に近いタイミングで売上金が回収できるならば決済手数料率が多少高くても喜ばれるかもしれません。



喜多埜氏 そうですね。あと、手数料5%を高いと見るか安いと見るかということがありますが、回線コストがかからないということを含めて考えていただきたい。しかも、いまだカードリーダーを入れていない(=カード会社の加盟店になっていない)ところが既存の端末を入れたときの決済手数料って、僕の想定では6%から7%くらいになると思うんです。



―― なるほど。確かに加盟店実績がなかったり、事業規模・売り上げ規模が小さいとカード会社の手数料率は割高に設定されますね。飲食店だと6~7%、いわゆる“夜のお店”だと10%を超えるケースもあります。



喜多埜氏 確かにカード決済を導入すれば、現金決済に比べて5%の手数料がかかるわけですが、そこは(PayPal Hereの)利便性を訴えたいですね。



―― ところで、加盟店開拓は「人海戦術」という面もあります。それらの訴求ポイントが、はたして“今現在クレジットカード導入を考えいていない”事業主にまで伝わるのでしょうか。



喜多埜氏 営業力の部分も我々の強みですよ。ソフトバンクには全国に2000店舗以上のソフトバンクショップがあって、そこで(PayPal Hereの)カードリーダーを販売できます。また、ダイレクト営業にも力を入れています。



 さらに(リアル店舗に)ソフトバンクWi-Fiを設置しにいっている部隊があり、すでに20万カ所以上にWi-Fiの設備を入れていただいています。そこには従来のカードリーダーが入っているところもありますが、もちろん入っていないところもある。これから数は間違いなく増やしていくはずですので、こういったソフトバンクの営業力は生かしていけると思います。



―― なるほど。ここまでお話をうかがっていますと、PayPal Hereは既存クレジットカード会社の決済サービスより魅力的な点が多く、(既存のカード会社加盟店を)リプレースするような展開も考えられるのではないかと感じます。カード会社の加盟店を積極的に獲得していくようなアクワイアリングは考えられないのでしょうか。



喜多埜氏 いえ、僕らはカード会社さんと戦おうとは思っていません。どちらかというと「カード利用が増えましたね」という部分で感謝される側に回りたい。市場を広げたいという気持ちです。



 もちろん、店舗様から依頼があれば、お話をさせていただきます。ただ、特に大規模店舗さんの場合はPOSレジになっているので難しいですね。PayPal Hereは本当に簡単な履歴が残るだけで、POSには対応していないので。



●PayPal Hereで狙う業種・業態



―― PayPal Hereの展開として、特に重視している業種・業態はどこになるのでしょうか。



喜多埜氏 実はまだ営業はやっていないんです(2012年7月26日現在)。お問い合わせは多数いただいているのですが、ローンチは慎重に行いたいので、まずはトライアル的にと考えています。



 その上で、ではどこの業種業態からターゲットにしていくかといえば、順当なところでは中小飲食店。あと先ほど述べたとおり、デリバリー系のビジネスは重視していきたいですね。ピザ屋さんとか、お寿司屋さんとか。



―― 大手宅配業者ではモバイルハンディターミナルによる着払い荷物のカード決済が実現していますが、その他のデリバリービジネスだとカード決済には対応していないケースがほとんどですね。



喜多埜氏 そうなんです。すでにデリバリー系の事業者からは多数お問い合わせいただいています。ほかにも、保険の外交などもニーズはありそうです。あとは、商店街の中にあるお店なども含めてどんどん行きたいですね。あと少し規模の大きいところとしては、地方の中堅スーパーなどもターゲットと考えています。



―― タクシーはいかがでしょうか。都内の大手タクシー会社はクレジットカードや電子マネー決済に対応していますが、地方を中心にクレジットカード決済に対応していないタクシー会社が大半です。



喜多埜氏 タクシーは考えています。ここも規模は大きいですからね。



●「現金払い」を過去のものに



―― ソフトバンクは今後、日本の決済市場にどんなインパクトを起こしたいのか。少し長期的な視野で、ビジョンをお聞かせください。



喜多埜氏 目に見えるところだと、(決済における)安心・安全・便利を実現したい。発表会の時に孫が申し上げていましたが、「財布を持ち歩くのはかっこ悪い」という風にしたい。ごく普通の人々が、「キャッシュレスで本当に便利になった」と実感していただける世界を作ります。この便利というのが、分厚い財布を取り出して、お金をいちいち数えるような面倒なことをしなくてよいという世界です。そして、ポイントカードやスタンプカードがいっぱい、みたいなこともない。本当に楽で便利で、お得な世界を作りたいと思っています。



―― もしかしたら、私の子どもたちは将来、サイフが現金でパンパンになるという経験をしないかもしれませんね(笑)



喜多埜氏 そうですよね。キャッシュレスがあたり前になって、慣れてしまうと、もはや便利だとも思わないかもしれません。そこで私たちは昔を思い出して、「現金払いなんて、よくあんなことやっていたなぁ」と感じるようになるのではないでしょうか。(プロモバ)



[神尾寿,ITmedia]





http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120827-00000032-zdn_m-mobi
※この記事の著作権は配信元に帰属します




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